セイクリッド・スクライブスafter(ティアクライス)
「セイクリッド・スクライブス」、むしろ幼なじみの恋に5題「あの日の約束を今」の続き。
レン・リインとマリカは仲良しだと嬉しいなぁ可愛いなぁ。
で、このあとリウは「なんでアンタのせいで私が赤くなんなきゃなんないのよ!」と八つ当たりを受けます。
本来の持ち主の手に渡った石を空にかざしてにっこりと笑った。宝石などと高価なものではないそれは、陽に透けて光を放つことをしない。ただ彼女の白い頬に影を落とすだけの存在だ。
それでもきれいと思えるのは決して贔屓目ではなかった。この石には彼の、離れていた間の大切な記憶が刻まれているのだ。
「見分けなんてつかないけど、それがレン・リインの石?」
さんざん、おめでとうと祝福してくれた仲間たちから少しはなれた場所で、そう訊いてきたのはマリカだった。この石の中には彼女との思い出も詰まっているのだろう。
けれどそこには嫉妬や悔しさといったものは欠片もなく、レン・リインは穏やかに首をふった。
「いいえ、これはリウ・シエンが持っていたものです。もっとも元々この石を拾ったのは私なんですけど」
「あら、じゃあ交換してたってこと?」
「はい。子供の頃の他愛ない約束ですけど、これをお互いだと思えば離れていても一緒にいられるという意味で」
「―――あのリウが、ねぇ」
引き攣ったマリカの表情には「あのヘタレがどの口で」というのがありありと出ている。
「でもさ、何でまた交換したの?交換っていうより本来の持ち主のところへ戻っただけなのかもしれないけど」
「ああ、それは……」
くすりと笑って、レン・リインはもう一度石を眺めた。
先ほどリウにこの石は二つともレン・リインのものだったと言われた。これを拾ったときのことを思い返してみても、やはり二つとも自分の物だったことはない。意味が分からず問い返しても、曖昧に笑って誤魔化されるだけだった。そして「おまえはそれでいーんだよ」と言う。
だがレン・リインはそれ以上のことはもう何も訊かなかった。リウがそれでいいと言うのなら、自分もそれでいい。何よりもそれに続けられたリウの言葉だけで、この石の意味は充分に果たされた。持ち主などもはやどうでも良いのだ。
「リウ・シエンが言ってくれたんです。もうお互いの石を持つ必要はない、これからずっと離れないで一緒にいるんだから、と」
そのときのレン・リインの幸せそうな表情は、見事にマリカの顔を赤くさせた。
>> DATE :: 2009/04/13 Mon